ヒトの染色体の数や形態について

染色体の遺伝学領域

ヒト染色体解析とは

染色体の遺伝学領域を細胞遺伝学(cytogenetics)といいます。細胞学(cytology)と遺伝学(genetics)との合成語です。
メンデルによるエンドウ豆(植物)の「遺伝の法則」が1900年に再発見され、その後「遺伝の単位」の親から子へ規則正しい遺伝様式が減数分裂での染色体と密接に関係していることがわかりました。その後、モルガンはショウジョウバエ(生き物)によって遺伝子と染色体との関係を明らかにしました。

ヒトの染色体の数や形態が詳しく観察・解析できるようになったのは遠い昔のことではありません。
チオとレヴァンが1956年に胎児の培養細胞を用いてヒトの染色体数は46本(2n=46)(性染色体は男性がXY型・女性がXX型)であることを明らかにしました。
その後、細胞培養や染色体標本作成の技術が改良され、様々な先天異常や造血系疾患にかかわる染色体異常がわかるようになってきました。染色体の解析精度も飛躍的に進展し、ヒトの染色体の分類と命名法が制定されました。

1960年以降、染色体による標準規約が何度も改訂されていています。
染色体解析の技術的革新は、1970年前後では染色体分染法により、ヒトの全染色体の識別が判るようになり、染色体の構造異常もバンドと記号により正確にわかるようになりました。

染色体構造の異常の解析

1980年代になると高精度の分染法が行われるようになり染色体構造の異常の詳しい解析が進みました。
1990年前後では、分子遺伝学的手法が細胞遺伝学の分野に導入され、染色体もDNAレベルで解析ができるようになりました。このころ、全ゲノムの塩基配列を決定し、遺伝情報とその制度の仕組みを解明するヒトゲノムプロジェクトが開始されました。

2000年代に入ると、ヒトゲノム解析が進み全DNAの塩基配列情報についてのデーターベースをもとに、マイクロアレイによる染色体DNAの高精度解析法が開発されて、染色体DNA上の部分的な欠失や重複、またDNAの塩基対の数まで連続したものが確認できるようになりました。

ヒト染色体地図

1990年に国際的レベルで前記したヒトゲノムプロジェクトが開始されました。全ゲノムの塩基を決定し、遺伝情報とその制度の仕組みの全体像を解明することを目的としました。
小さく断片化されたDNAクローンの塩基配列決定(シークエンス)が加速的に進行し2003年に全ゲノム解明が報告されました。

ヒトゲノム解析では、ヒトの遺伝子数が22,000~25,000と推定されています。
マウスを含む哺乳類ではゲノムサイズも遺伝子数もヒトとほぼ同じです。ヒトのゲノムは3,100Mb(31億bp)です。

エクソンとイントロンを含む遺伝子領域と呼ばれる平均サイズは33kbとされているのでヒトゲノム(3,100Mb)の中で遺伝子が占める領域は3割弱しかありません。大部分は遺伝子以外の領域です。(前述参照)

遺伝子はDNA分子の上で均等に分布していません。これは、DNAが規則正しく何重にも折り畳まれて染色体を形成しています。特定の遺伝子は染色体上の決まった位置に存在しています。
この染色体のバンドは縦軸方向に沿って遺伝子の密度が高い部分と低い部分が生じます。遺伝子の分布がゲノム上で不均一であるのは染色体で確認することが出来ます。これは、染色体の遺伝子の数を表しています。

遺伝子の数は染色体の大きさとは関係ありません。例えば、常染色体の19番染色体のように、小さい染色体でも他の同じくらいの大きさの染色体と比べると遺伝子の数が非常に多くなっています。
また、出生可能なトリソミーとなる13番、18番、21番染色体は他の染色体に比べ遺伝子の数が少ないのです。
もともと遺伝子数が少ないのでトリソミーとなっても出生可能になります。他の染色体がトリソミーの場合は胎内で成長が停止し流産となります。

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