核型の記載法

核型とは?

遺伝子検査のうち、染色体検査の結果は、ISCN(International System for Human Cytogenetic Nomenclature)と呼ばれる国際規約に沿って書かれ、染色体の形、大きさ、数などが「核型」として表記されます。ヒトでは正常な染色体は22対44本の常染色体と1対の性染色体の合計23対46本の染色体から成り立っています。

記載の一般的原則

はじめに性染色体を含んだ総染色体数を書き、コンマに続いて性染色体の構成を書きます。女性だとXX、男性だとXYと表されます。

  • 健常女性:46, XX
  • 健常男性:46, XY

染色体に異常があるケースは、はじめに性染色体の異常を書いて、続いて常染色体の異常を染色体番号が小さい順に書きます。

数的異常と構造異常

数の異常に関しては、数が増えている、または減っている染色体の前に+やーを書いて表します。

構造の異常に関しては、下で示すような異常を表す文字列に続いて、1つ目のカッコ内に異常のある染色体番号を、2つ目のカッコ内に染色体バンドの部位を書きます。複数の染色体番号や染色体バンドがあるケースは、セミコロン (;)で区切ります。

核型の表記に使われる記号(主なもの)

add: 由来不明の過剰染色体部分(Additionaml material of unknown origin)

cen: セントロメア(Centromere)

c: 構成的核型(Constitutional anomaly)

del: 欠失(Deletion)

der: 派生染色体(Derivative chromosome)

fra: 脆弱部位(Fragile site)

ins: 挿入(Insertion)

inv: 逆位(Inversion)

mar: 由来不明染色体(Marker chromosome)

mat: 母親由来(Maternal origin)

p: 染色体短腕(Short arm of chromosome)

pat: 父親由来(Paternal origin)

q: 染色体長腕(Long arm of chromosome)

r: 環状染色体(Ring chromosome)

rec: 組み換え染色体(recombinant chromosomes)

t: 転座(Translocation) 

ter: 染色体の末端(Terminal of chromosome)

数的異常の例
  • 21番染色体のトリソミー(ダウン症):47, XX, +21
  • 三倍体:69, XXY
構造異常の例
  • 14番染色体q11→q32の逆位(慢性リンパ性白血病):46, XY, inv(14)(q11q32)

簡略式と詳述式

構造異常に関しては、上記の簡略式に加え、複雑な構造異常があるときに詳述式という方法が用いられることもあります。

セミコロン (;)で染色体内の切断点を、2つのコロンで(::)で切断と再結合を、→で断片の範囲を示します。染色体の末端を ter で表し、短腕の末端を pter、長腕の端末を qter とし、セントロメアを示すときは cen と書きます。 構造異常を認める染色体の記述は短腕の末端(pter)より始まり、長腕の末端(qter)で終わります。

  • 5番染色体の長腕 q13-q33 領域の欠失
    • 簡略式:46, XX, del(5)(q13q33)
    • 詳述式:46, XX, del(5)(pter→q13::q33→qter)

モザイクとキメラ

モザイクは突然変異や染色体の組み換えにより一つの個体内に2つ以上の遺伝的な形質を持つ状態であり、一方キメラは異なる個体からの遺伝的な形質を持つ状態を指します。核型記載は、スラッシュ(/)を用いて、その前後に個体が持つ2つの核型を書きます。また、モザイクとキメラは、mosとchiの文字列を核型の前に書くことで判別します。

  • 正常と 21 トリソミーの形質が混在(ダウン症候群) : mos 46, XX/47, XX, +21

派生染色体

ひとつの染色体の逆位と欠失、両腕の欠失、または複数の染色体の不均衡型転座産物を派生染色体(der: Derivative chromosome)と呼びます。

  • 1p32と3q21の転座と1q25と11q13の転座から生じた派生1番染色体: 47,XY,(1;11)(q25q13) + der(1)t(1;3)(p32;q21)

組換え染色体

組換え染色体(rec: Recombinant chromosomes)は逆位・挿入といった構造異常染色体の保因者の減数分裂での乗換えにより生じます。

  • 46 ,XX ,inv(2)(p21q31) 逆位保因者女性の減数分裂で生じる組換え体: 46, XX, rec(2)dup(2p)inv(2)(p21q31)mat 

曖昧な染色体バンド

曖昧な同定

数的異常や構造異常が曖昧なケースは(?)を使って表します。

  • おそらく 21 番染色体の喪失であるケース: 45, XX, −?21 

切断点または染色体番号が曖昧 

切断点または染色体番号が曖昧なケースは(~)を使って表します。

  • 1番染色体長腕のバンド21~24のどれかで欠失: 46, XY, del(1)(q21~24)

2つの可能性がある場合 

判定結果に2種類の可能性があるケースは(or)を使って表します。

  • 19番染色体のp13 か、q13に付加断片: 46, XX, add(19)(p13 or q13) 

不完全核型(Incomplete karyotype; inc)  

染色体標本の質が低いために分析が不完全なケースは、核型に最後に inc と書きます。

  • 1番染色体長腕に欠失があるが、その他にも異常があるケース(inc, [ ]内は分析した細胞数): 46, XX, del(1)(q21), inc[4] 

正常変異

一般的に症状を呈さず、妊娠、子孫への影響もないと考えられている所見です。

長さ・数・位置の変異

ヘテロクロマチン部分(h)、サテライトストーク(stk)、サテライト(s)の長さの変異は、染色体や腕を部位を書いた後に h、stk、sの文字列を書き,その後に長さの増加(+)あるいは長さの減少(ー)をつけることによって表します。数と位置の変化は、染色体と長腕・短腕を書いた後にh、stk、sの文字列を書いて表します。

  • 16 番染色体長腕のヘテロクロマチンの長さの増加: 16qh+
  • Y 染色体長腕のヘテロクロマチンの長さの減少: Yqh−

脆弱部位

染色体の構造異常が生じやすい遺伝子の場所のことであり、fra(Fragile site)で表されます。

  • 10 番染色体の2ヶ所(q22.1, q25.2)に脆弱部位: fra(10)(q22.1), fra(10)(q25.2) 

数の異常

性染色体の異常

  • クラインフェルター症候群: 47, XXY
  • Xモノソミー: 45, X

常染色体の異常

  • 13トリソミーと21トリソミー: 48, XX, +13, +21
  • 22モノソミー: 45,XX, -22

片親性ダイソミー(Uniparental disomy; upd) 

2本の染色体、または染色体領域がいずれも一方の親に起源を持つケースのことを言います。

  • 15 番染色体が母側片親性ダイソミー: 46, XY, upd(15)mat 

参考文献

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