NIPT情報関連

ダウン症と中絶について

先天性の遺伝子異常がわかるNIPT

出産前に先天性の遺伝子異常がわかるNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)。「我が子は大丈夫か?」と気になり、検査する人は多くいます。ですが、すべての人が「陰性(反応なし)」というわけではありません。残念なことに「陽性(反応あり)」と出てしまう人もいます。多くの両親は、ダウン症だと分かった子供とどのように向き合うのでしょうか?

ダウン症とはどのような病気?

ダウン症とは、先天性の染色体異常の一つです。人間には22対の常染色体が備わっているのですが、稀に、常染色体が3つ、または1つしかないことがあります。本来とは違う遺伝子情報は、体や知能への異常として表れてしまいます。

ダウン症は、21番目の常染色体が3つある「21トリソミー症」といわれています。いくつかある染色体異常の中でも、最も生じやすい病気です。特に、高齢出産だとダウン症の可能性が高くなるといわれており、20代前半では約1,000人に1人の割合ですが、40代以上になると約100人に1人にダウン症の赤ちゃんが生まれます。もちろん、あくまでも統計でしかありませんが、ダウン症の子が生まれるリスクが高まるのには変わりはありません。

ダウン症の症状について

ダウン症の症状はいくつもありますが、最も特徴的なのは「発達障害」についてです。ダウン症は幼少期の外的刺激が不十分(興味が低い)であることで、筋肉や言語の発達などが遅くなります。その結果、言葉がでなかったりあるいは出にくかったり、表現力が低いなどがありますがゆっくり成長していくのです。

また、人によっては外的刺激が無いことで知識障害になる子供もいます。ですが、車の運転や仕事をしている人も多く、決定的な症状というわけではありません。学習スピードは遅いかもしれませんが勉強できないわけではなく、実際に大学を卒業した人もいるほどです。発達障害があったとしても、それを個性として受け止めれば、あまり気にならないということでしょう。

他にも、染色体異常であることで、先天的な合併症を持っている場合もあります。

ダウン症の多くは中絶を選択している

NIPTでダウン症と判定された家庭の多くは中絶を選択しています。2013年から2018年の間に出生前遺伝学的検査を行った人数は約65,000人に上りますが、そのうち約9割以上が中絶を選択しました。

中絶を選択した理由は様々ですが、一番は「身体的または経済的に産み育てることが困難」ということです。無事に出産したとしても、ダウン症の子供を育てるのは様々な困難があります。育児や教育だけではなく、合併症などのための医療費が必要になることもあるからです。それらのことを踏まえて検査結果を説明し、医者によっては「中絶」をすすめることもあります。

また、子供の将来を心配する人もいます。ダウン症と判明された親の多くは高齢出産な家庭が多く、寿命も気になります。自分たちが生きているうちは子供を守ることができますが、「自分たちが亡くなった後は大丈夫なのか?」と心配なのです。極端な考えではありますが、「子供が苦労するなら生まないほうがいいのでは?」と思うようです。

もちろん、誰もが好きで中絶をしているわけではありません。経済面や将来のことを考えて、仕方なく中絶を選択してしまいます。中絶したけど後悔する親もおり、つらい決断だったことがわかります。

出産する決意

中絶する家庭は多いですが、出産を決意する家庭もあります。子育てをする大変さはよく理解していますが、それでも自分の子供です。誕生を喜ばないわけがありません。年齢的に今後の出産が難しい親も多く、「この子以外に考えられない」という親も多いのです。

また、罪悪感から出産を決意する親もいます。中絶は法律的に認められているとはいえ、子供を殺す行為です。自分の意志で死なせるという罪悪感から、中絶に踏み切れない人もいるようです。

ですが、理由は何にしろ、出産した親の多くは「産んでよかった」という答えがあります。将来どうなるかわからないですが、少なくとも子供の顔を見ることで「中絶せずによかった」と後悔しなかったということです。

NIPTは、出産前にダウン症かどうかを知ることができます。それにより、出産前から家族の協力などの準備をすることができるのです。同じ産むにしても、NIPTするかどうかで決意も変わり、子供への接し方も変わってくるでしょう。

海外の中絶状況

海外でもダウン症の中絶は行われています。特に北アイルランドは中絶に積極的で、出生前遺伝学的検査によってダウン症と診断された場合、ほぼ100%に近い確率で中絶を選択すると、アメリカのCBSニュースにて放送されました。「健康な子供を熱望することは悪い事ではなく」それ故、「ダウン症の撲滅を実現した」といわれています。

また、近年アメリカでも中絶する人は増えつつあり、ダウン症と診断された約98%の妊婦が、中絶に踏み切っているそうです。

ですが、同じアメリカでも「人間の尊厳を信じる」として、中絶を禁じる州もあります。ペンシルバニア州の下院議員「マイク・ターザイ」氏は、ダウン症を一つの「個性」として判断し、社会的に受け入れる決意を持っています。人は誰でも欠点を持っており、ダウン症もその一つでしかないのです。

ドイツでも、中絶は固く禁止されています。過去には「中絶することで逮捕された」という話もあり、たとえダウン症と分かっても気軽に中絶することはできません。ただ、近年では妊婦の相談窓口である「妊娠葛藤相談所」の相談内容によっては、中絶が認められることもあります。また、認められないとしても、経済的な理由などから育てられない場合、養子縁組の公的制度を利用できるなど、国のサポートが行き届いています。

宗教的にも中絶は禁忌とされていることが多く、カトリック教徒の多いパラグアイやエルサルバドルも中絶を禁止されています。北アイルランドもカトリック教徒が多いですが、過去に「中絶を受けられずに死亡した妊婦の事件」をきっかけに議論が進み、例外的に2018年に中絶が合法化となりました。

他にも、インドやフランスは中絶が合法的。モロッコや韓国は禁止されているように、国ごとで考え方や法律は変わってきます。

ダウン症患者をめぐる裁判

話は変わりますが、出生前遺伝学的検査の結果によって裁判が行われたことがあります。

2011年に起きたある40代夫婦の話ですが、高齢出産ということもあり、ダウン症などの万が一を考え超音波検査を実施します。診断の結果は「後頭部のむくみ」があり、「ダウン症の疑い」が見受けられ、確定診断を行うため、羊水検査を受診することに決めます。

羊水検査を行った結果、超音波検査の結果とは裏腹に、医師からは「問題ない」と伝えら、夫婦は出産を決意したのです。

しかし、実際に出産してみるとダウン症の子供であり、さらには、呼吸器系や消化器系など様々な合併症を起こしていました。

もちろん、人工呼吸器などを用いた懸命な治療を行いましたが、その甲斐もなく約3ヶ月ほどで亡くなってしまいます。当時の様子では、治療中の姿があまりにも痛々しかったそうです。

そして、子供の両親は「医者の判断が間違ったこと」について慰謝料を求める裁判を起こします。「判断のミスにより中絶の機会を失った、出産のための準備をする機会を失った」という内容ですが、「産まなければ子供は合併症で苦しむこともなかった」という子供を想う気持ちもあったと思われます。

後の裁判で分かったことですが、このような事態になった理由は、医師の伝達ミスだったそうです。実際には「陽性」反応が出ていましたが、母親には「陰性」と誤って伝えたと、裁判で証言しています。

このような裁判は日本だけではなく、アメリカやフランスなどでも行われ、賠償金が認められたケースもいくつか存在しているのです。

ダウン症と中絶の今後

近年、高齢化が進み、結婚年齢も引き上げられることで、ダウン症の赤ちゃんは増え続けると思われます。経済状況も好景気とはいえず、家庭が苦しいことから中絶を決断する夫婦も多いことでしょう。

中絶は人生が一変する重要な選択です。ダウン症の赤ちゃんを望まない親も多いですが、出産を望む親もいます。慎重に決断し、悔いが残らない選択をしましょう。

参考文献:https://medicalnote.jp/contents/151105-000027-GFYQSL、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/39666?page=4、https://times.abema.tv/posts/7000165、https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/239/、https://www.bbc.com/japanese/44276096、https://the-liberty.com/article.php?item_id=14393、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/39666、https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0503R_V00C14A6CC1000/

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