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妊娠

中絶の歴史と出生前検査の需要性について

近年、NIPT(新型出生前診断)の発展により、出産前に確認をする親が増えてきています。このような確認は半世紀前から続いており、昔から一定の需要があったのです。ですが、全体的に見ると、超音波検査を除く出生前検査の割合は全体の数%しかなく、欧米よりもかなり低いことが分かります。なぜ、昔から需要があったのに検査を利用する人は少なかったのでしょうか?

優生保護法をめぐる考えの衝突

出生前検査の割合が少ない理由として、過去に起きた優生保護法の対立が原因であると考えられます。

優生保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項の際、母性の生命健康を保護する条例のことです。簡単に説明すると、「母親の生命の負担になる場合は、不妊手術や中絶を認める」内容になります。ちなみに、現在では条例改定と共に、「母体保護法」へと名称が変更されています。

1948年の施行当時は、現在よりも考え方が広く、親になる障害者の不妊手術や中絶が推奨されていました。経済面や子育ての困難性などの面もありますが、優生学的な理由から、障碍者の子供は障碍者になりやすいと考えられていたからです。また、人口増加による経済の圧迫も危惧し、経済的な理由による中絶なども認められるようになり、同時に、不妊手術や中絶の手続きも簡単になります。

結果として中絶する人は増え、一時期は年間100万件を超える手続きがあったそうです。ただ、あまりにも中絶が多いことから、中絶反対の団体や宗教団体は、70年代初めに、「経済理由による中絶を禁止(経済条項の廃止)」する異議申し立てを国会へ提出します。

ですが、その届け出は受理されずに廃案になります。廃案になった理由は、望まない出産を避けたい女性たちによる訴えでした。何らかの理由から望まない妊娠してしまった場合、合法的な中絶ができないのはとても困るからです。

そして、経済的な中絶の廃止を願う団体(主に障害者)と、経済的な中絶がなくては困る女性たちの訴えにより、長らく条例改定への対立が続いていきます。

しかし、両方の立場に値する障害を持つ女性が、双方の立場を理解して発言し始めたことで変化が生じ始めます。それにより、80年代になると堕胎罪と優生保護法の廃止に加え、優生保護法の考えであった「出産の有無は女性が決める」という考えから、「胎児の選別中絶は女性の権利には含まれない」という考えへと変化していきました。

さらに、96年になると優生保護法の優生学的な部分が削除され、現在の条例内容になると共に「母子保護法」へと名称が変化していくのです。

日本の出生前検査の割合が低い理由には、このような歴史が深く関係していると思われ、中絶につながる出生前検査が疑問視されていたからだと考えられます。

NIPTの発展による需要性の増加

外国に比べると出生前検査の割合は少ないですが、近年ではその割合も増えつつあります。というのも、新たな出生前検査として、 NIPTが注目されつつあるからです。

以前から行われてきた羊水検査や絨毛検査ですが、どちらも母子ともに負担が大きいことから気軽に行うことではありませんでした。費用も高く、検査を望まない親も少なくありません。

ですが、NIPTは、母親から採血するだけで簡単に検査が行えます。NIPTだけでは確定診断とはいえず、後に羊水検査や絨毛検査を行う必要はありますが、気軽に胎児の状態(陰性陽性)が分かり、その結果から、羊水検査や絨毛検査を診断することにつながるからです。

近年、高齢化になるにつれ、出産年齢も上がってきており、それにより、ダウン症などの疾患を持つ子供の割合が高くなっています。

今後は、気軽にNIPTで検査をし、その結果から、羊水検査や絨毛検査で確定診断をする親は増えていくことでしょう。

NIPTの無認可医院の増加

気軽に出生前検査ができることから、日本でもNIPTは人気が出ています。ですが、どの病院でも検査ができるわけではありません。そのため、需要性を求めて、認可を無視した無認可施設の増加が問題となってきています。

「NIPTは採血して検査する」だけですので、認可されていなくても簡単に行うことができます。極論をいってしまえば、採血さえできれば、産婦人科でなくてもNIPTが可能であるといえるでしょう。

NIPTの需要が増えつつありますが、供給が追い付かないことから、無認可医院の増加も増えつつあるのです。

無認可医院はいけないの?

無認可医院という名称から、「詐欺」や「悪徳医師」といった印象が思い浮かびますが、実際にはそのようなことはありません。採血は医師指示のもと看護師、臨床検査技師が行い、検査は専門の企業が行いますので、しっかりした結果を知ることができます。

さらに、無認可医院では「検査年齢の制限がない」「医師などの紹介状が必要ない」「速ければ翌々日から検査(採血)が始められる」など、無認可医院ならではのメリットもあります。

一方で、無認可であることで問題もあります。無許可医院では、遺伝子検査を専門とする臨床遺伝専門医が在中していない事も多く、陽性の際に専門的なアドバイスが不足するなど、決してメリットだけではありません。

以上のことから、認可を決める日本医学会と日本産科婦人科学会は、無認可医院での検査を推奨していません。

無認可医院は絶対にダメとはいいませんが、臨床遺伝専門医がいないことで遺伝子カウンセリングができずに後悔をした親も多いため、可能な限り認可医院で検査することが推奨されているのです。

出生前検査をしない選択

出生前検査を行う親がいる一方で、出生前検査を行わない親もいます。たとえダウン症の子供だったとしても、子供を育てると決意した親にとっては、わざわざ検査結果を知る必要が無いからです。

また、検査結果を知るのが不安な親もいます。もし、検査結果が陽性の場合、命の選択をしなければいけないからです。日本では、出生前検査によって遺伝子障害が発見された場合、夫婦の95%以上が中絶を選択するそうです。周囲の人に相談しても中絶を勧められ、育てる大変さなどを考えれば、それは仕方がないことでもあります。

ですが、どのような理由であれ、中絶は胎児を殺すことです。自分の選択によって命を奪ってしまうのが辛く、命の選択をしなくていいように、出生前検査をしない親も少なくありません。

医師によっては、出生前検査に否定的な人もいます。陰性なら出産し、陽性なら中絶するという命の選別を良しとしない考えを持っているからです。障碍児の子育てが大変なのは重々承知ではありますが、授かった命を大切に、もし中絶するにしても、深く悩み抜いた結果として決断してほしいと考えています。

出生前検査は多くの親の助けとなりますが、同時に、親の不安になる可能性もあるのです。

将来的な需要性

出生前検査は、胎児の遺伝子情報を知ると共に、その後の苦労を回避できる手段でもあります。身体と経済面で負担の少ないNIPTが普及していくことで、より多くの人がNIPTを始めとした出生前検査を利用していくと思われます。

ただ、だからといって命の選別をないがしろにしていいわけではありません。遺伝子カウンセリングなどを行い、しっかり考えた上で「どうするか」を決めていく必要があるでしょう。

参考文献

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