ダウン症候群関連

悲しみの末の決断

NIPTと今後の決断、「命の選別」で揺れる親心と医師の葛藤とは


NIPTの後に待つ「命の選別」とは

年々件数が増えているNIPTですが、それと同時に胎児の今後についてどうすべきかを迷う方も増えています。
実際に、NIPT検査数は2013年度で7775件でしたが、2018年度では14344件とほぼ倍に。2019年3月までの集計では、NIPT検査において陽性だった方の妊娠中断率は78%、多くの方が妊娠を継続しない選択をしたことがわかります。

昭和大学医学部産婦人科学講座
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000559098.pdf

NIPTによって染色体異常が早い段階でわかることは、果たして「本当に良い選択肢は何なのか」という疑問を突きつけられる瞬間でもあります。
陽性だった大半の方が妊娠を中断する決断を行っていますが、そのどれもが決して容易な決断ではなく、つらく悲しいことは想像に難くないでしょう。
この選択によってひとつの命が消えてしまうこと、もし生まれてきてもとてつもなく険しい道が待っていること、どちらの選択をしても親子ともに本当に幸せなのか?という疑問がつきまといます。
今回は、二度の妊娠で二度の重大な決断をした夫婦の経験をもとに、NIPTを受けて陽性になった後の「命の選別」について考えてみましょう。

とある夫婦の二度の決断と別れ

妊娠し、羊水過多のため検査をしたところ、赤ちゃんの異常が見つかり「18トリソミー」の可能性を告げられ、その後突然胎児の心音が止まって死産。
さらに次の妊娠でも羊水検査の結果複雑な染色体異常があり、中絶というつらい道を選んだ夫婦がいます。
妊娠を望んだ夫婦は、なかなか赤ちゃんを授かることができず、ついに妊娠したというときには37歳の高齢出産に。妊娠中に起こった羊水過多により検査をすると、胎児は18トリソミーだと判明しました。
それでも、心奇形のように重い症状がみられなかったことや、もうすぐ出産の時期が迫っていたこともあり、産まれてくるときを待ちます。
しかし、それは叶いませんでした。
突然心音が止まり、結果は死産。
産まれてきたとしても長く生きられないことが多いという18トリソミーは、産まれることができても、できなくても大変つらい現実が待ち構えていることがわかります。

yomiDr.
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190207-OYTET50014/?catname=column_inochihakagayaku

我が子との時間と葛藤に苛まれる両親

死産ののち、再び夫婦の元に赤ちゃんがやってきました。
しかし、検査を受けた結果は残酷なものでした。
大きく育つことはもちろん、産まれてくることができるかどうかもわからないという、18トリソミーよりもさらに複雑な染色体異常を持った赤ちゃんです。
このまま妊娠を継続させても良いのかどうなのか、夫婦には当然わかるはずもありません。それでも、親として思う気持ちはひとつ。
「少しでも長く我が子と一緒の時間を過ごしたい」
そんな気持ちと裏腹に、このままお腹の中にいても後々一緒にいられなくなってしまうことを想像すると、少しでも悲しみが小さいうちに決断した方が良いのではと感じます。
そして夫婦は、人工中絶を選びました。
一度大きな悲しみを経験した夫婦だからこそ、答えを出せたのではないでしょうか。
無事に産まれてくる保証はどこにもないこと、もし産まれても長く生きられる保証もないこと、さまざまなケースを考え、悩み、そしてこれ以上の悲しみを積もらせることで心が壊れてしまう前に、夫婦は決断しました。
もしこれを自分に置き換えたとき、果たして同じように決断することができるでしょうか。
お腹の中で確かに胎動があり、今まさに生きている我が子と別れるという選択をできる人が、どれくらいいるのでしょうか。
一度我が子を亡くしてしまった経験をもつ人が、また我が子と別れなくてはならない選択を迫られたときの気持ちは、まったく想像もつかないほど深い悲しみに溢れていることがわかります。
自身で我が子の今後について選択しなくてはならない、まさに「命の選別」を迫られる親。
我が子との短い時間を、いったいどのような気持ちで過ごしたのでしょうか。

命を助ける立場、医師の葛藤

染色体異常などの障害について。
たとえ18トリソミーのような染色体異常が見つかったとしても、誰もが100パーセント、必ず幸せな生活を送ることができるとわかっているならば、障害があっても前向きに受け止められるのではないでしょうか。
しかし、実際には障害を持っている我が子をなかなかかわいいと思えないという方がいるのも事実。
単純に我が子イコール絶対的にかわいいというものではありませんし、さらに障害があるという事実を受け入れなくてはならないこと、実際に産んでみなければわからないことだらけです。
障害があることがわかったとき、医師を含む周りは「中絶した方が良い」とも「大切な命なのだから中絶せず産もう」とも言うことはできません。
妊婦さんが望む検査について説明をし、実際に検査をし、見つかった障害や病気を告げて理解してもらうことだけで、その後をどうするかはあくまで夫婦で決めることになります。
だからこそ、小さく力強い生命に日々触れる医師も、大きく迷うのです。
「本当にこれでよかったのか?」
「助けられる命ではなかったのか?」
人を助ける立場の方だからこその大きな葛藤が、そこにはあります。

NIPT検査が「命の選別」ではない

NIPTを受ける妊婦さんは、増え続けています。
陽性反応がみられる胎児もNIPT件数が増えるとともに増加し、これに伴って妊娠継続を断念する方もいらっしゃいます。
ただ、NIPT検査が命の選別をしているわけではありません。
NIPT検査は、あくまで胎児の状態を知り、両親や家族、医療機関が適切なサポートを行い、産まれてくる赤ちゃんに対して万全のバックアップをすることや、両親に対して障害や今後について理解してもらうためのものです。
NIPTでは複数の染色体異常の可能性を検知することが可能ですが、これらの障害について正しく知り、まずは両親がその現実を受け止めるための準備をしなくてはなりません。
障害があっても長く生き、生活を続けられている人が多くいるということを念頭に、まずこれからどうしていくか、綿密なカウンセリングを受けながら答えを出していく必要があります。
その答えは、決して医師にも委ねることはできません。
たとえ障害があっても生きていてくれれば良いと思う気持ち、障害があるために生まれてくることを懸念する気持ち、どのような気持ちも間違いではなく、悲しみや苦しみの果てに生まれたありのままの気持ちです。
その気持ちを周囲が「命の選別」だと揶揄することは許されないことなのではないでしょうか。
誰よりも会いたいと思った我が子との今後を決断する両親。
年々検査を受ける人が増えているNIPTの裏には、医療の発達とともに思わぬ戸惑いに見舞われている方の姿があることを知っておきましょう。

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