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日本や各国の対応は?新型出生前診断(NIPT)における人工妊娠中絶

妊娠初期から行える新型新生児出生診断(NIPT)をきっかけに、人工妊娠中絶を考えている人もいるでしょう。人工妊娠中絶は、体の負担だけでなく、心にも大きな傷を残すことがあります。 

今回は、日本や世界の国々の中絶について紹介します。これからNIPTを受けようと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。 

NIPTで人工妊娠中絶を選ぶ人がいる理由

NIPTの検査結果で陽性となったとき、おなかの赤ちゃんが染色体異常である可能性を意味します。自分の子どもが病気であると分かったとき、戸惑う人は少なくありません。

特に、日本では染色体異常を持つ子どもを育てる環境が十分に整っていないため、NIPTの結果によっては人工妊娠中絶を選ぶ人もいるでしょう。人工妊娠中絶とは、指定の期間までに赤ちゃんを堕ろすことをいいます。実際に、日本は「中絶大国」といわれており、さまざまな理由から人中絶をする人が増えています。

NIPTを受ける方の中には、単に高齢出産という理由だけでなく、赤ちゃんの健康状態に人一倍関心が高いことが伺われます。待ち望んだ赤ちゃんに障がいの可能性が見つかったとき、中絶を選択することは、心に大きな負担がかかるものです。

NIPTを受ける場合、検査結果が陽性になったら、人工妊娠中絶をするかどうかを決めると、大きなショックを受けることになる可能性もあります。NIPT検査を受けるときは、事前に自分やパートナーと命の定義について考える必要があるでしょう。

 日本における人工妊娠中絶の状況

日本の刑法には「堕胎罪(だたいざい)」があり、妊娠中の女性や医師が中絶を行うことは禁止されています。一方で、母体保護法という法律によって、条件を満たせば、違法性なく中絶が行えます。

もともと母体保護法の前身は「優生保護法」という法律であり、日本でも、不良な子孫が生まれるのを防ごうとする歴史がありました。現在では、妊婦さんの命や健康を保護するため、母体保護法に改定されています。

母体保護法における人工妊娠中絶には次のような条件があります。

  • 妊娠や出産が妊婦の健康に影響を及ぼす場合
  • 妊娠や出産により、経済的問題が起こる可能性がある場合
  • レイプにより妊娠した場合

(※実際の人工妊娠中絶は、パートナーの同意も必要です)

NIPTの陽性を理由に中絶をする人の割合は多く、おなかの赤ちゃんの健康を知るためであるはずの検査が、結果的に「命の選別」になっているという意見もあります。

現時点では、母体保護法において、人工妊娠中絶の胎児に関する項目がありません。そのため、産婦人科学会など関連団体は、染色体異常を持つ胎児の人工妊娠中絶に対して否定的な立場を取っています。

すべての国が人工妊娠中絶を認めているわけではない。

日本では、胎児の父親と母親の了解があれば、中絶を選択肢にすることができますが、世界の国のなかには、人工妊娠中絶を違法としている国もあります。

人工妊娠中絶が禁止されている理由

そもそも世界のいくつかの国で、人工妊娠中絶が禁止されている理由には、宗教的背景が大きな影響を与えています。

日本人にとって、宗教の神やその教えのために、中絶を選択できないことは、不思議に感じられるかもしれません。日本では、冠婚葬祭や年中行事で仏教の文化が根付いているものの、無神論者の割合が高いといえます。

たとえば、キリスト教のカトリックでは、中絶に対して厳しい考えがあります。胎児は神の賜物(たまもの)と考えられているためです。そのため、妊娠により母体の命が脅かされる可能性があっても、中絶を一切受けられないという国もあります。以降では、いくつかの国の人工妊娠中絶の歴史や見解について挙げていきます。

アメリカにおける人工妊娠中絶の歴史と状況

とても意外なことですが、ひと昔前まではアメリカでも人工妊娠中絶は違法とされていました。1970年代になると、アメリカで女性の権利を求めるフェミニズムが活発します。1973年には連邦最高裁の判決をきっかけに、中絶が認められるようになりました。

妊娠や出産により、女性の身体的また経済的な負担は大きいものです。アメリカでは、日本と同じように、健康や経済的に過度の負担があるケースや、レイプなど望まない妊娠のケースに、中絶が「女性の権利」として認められています。

一方で、アメリカには信仰が厚い人が多く、人工妊娠中絶に対して否定的な意見を持っている人も多くいます。そのため、州選挙や連邦選挙の争点になることもしばしばです。

 イギリスにおける人工妊娠中絶の歴史と現状

イギリスでは、家族の数が増えて貧困化するのを防ぐために、社会福祉政策のひとつとして、人工妊娠中絶が認められるようになりました。イギリスでもアメリカと同じように、1970年代のフェミニズムにともなって、中絶が女性の権利として考えられるようになります。

特にイギリスでは、そのほかの診療と同じように、NIPTやその後確定検査も無料で行われます。さらに、イギリスでは、障がい者に対する公的補助を受けられます。近年では、染色体異常のある胎児の出産を避けるために、NIPTをはじめさまざまな検査を行っています。

イギリスの法律でも人工妊娠中絶は認められていますが、日本と異なるのが、胎児に関する規定があることです。具体的には、おなかの赤ちゃんの心身に重大な異常がある場合、法律によって人工妊娠中絶が認められています。このため、胎児の異常による人工妊娠中絶に限っては、妊娠の全期間で認められています。 

一方で、NIPTにより胎児の障がいが判明したあとに中絶をすることは、障がい者に対する差別という見方も出てきています。最終的にNIPTを受けるかどうか、障がい児を生んで育てるかどうかは、赤ちゃんの両親が決定します。

 ドイツにおける人工妊娠中絶の歴史と現状

第二次世界大戦中、ドイツではヒトラー政権の優生学に基づいた思想によって、障碍者の差別につながる政策が行われていました。優生学とは優れた遺伝子を残し、そうでない遺伝子を排除しようというものです。

戦時中のドイツでは中絶だけでなく、強制不妊や隔離といった措置が取られてきました。そのためドイツは、当時から人工妊娠中絶の法律に、胎児に関する条項が盛り込まれていました。

生命倫理の観点からみると、複雑な歴史を持つドイツですが、1994年に法律内で人工妊娠中絶における胎児の条項が排除されました。ドイツにおける胎児条項の排除は、障碍者差別に対しての配慮がある事を意味します。これは長い間、優生学の思想の影響が強かったドイツにおいて、非常に画期的なことといえるでしょう。

日本では、赤ちゃんの中絶を選択する目安として、母体保護法に胎児に関する条項の必要性を説く人もいます。しかしながら、裏を返せば、法律によって障碍者の排除ともいえるべき事項が記載されていることになり、差別的意識の温床につながる恐れもあるといえるでしょう。

最新の医療技術では生命倫理が問われやすい

NIPTなど最新の医療技術を使った診療では、しばしば生命の倫理的な問題に直面します。人工妊娠中絶における各国の対応は、さまざまな取り決めがあります。NIPTを受けた後に、どのような対応を取るかどうかは、検査を受ける妊婦さんやパートナーの方に委ねられます。NIPTを受けるにあたって、日本だけでなく世界の国々の動向を知ることは、考えや意見をまとめるうえで役立つでしょう。

参考文献

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