NIPTに関するコラム

出生前診断の結果で悩んだらどうする?遺伝カウンセリングが必要な理由

出生前診断は、妊娠中におなかの赤ちゃんの健康状態を調べる検査のひとつです。具体的には、赤ちゃんに染色体数の異常がないかを調べます。

 出生前診断とは?

出生前診断は、妊娠中におなかの赤ちゃんの健康状態を調べる検査のひとつです。具体的には、赤ちゃんに染色体数の異常がないかを調べます。これまで、出生前診断は、おなかに針を刺して羊水を調べるなど、母子に負担がかかる検査が行われていました。

近年、日本でも広く行われるようになったのが新型出生前診断(以下、NIPT)です。NIPTは妊娠の早い段階で、採血のみで行えます。 

その一方で、検査結果で赤ちゃんの障碍が見つかったときに、妊娠中絶を選ぶ人も少なくありません。

出生前診断の陽性は確定診断が必要

NIPTの検査結果は「陰性」「陽性」のいずれかになります。赤ちゃんに染色体数異常の可能性があるとき、検査結果は陽性となります。NIPTは非確定検査のため、検査結果で陽性が出た場合はら、羊水検査や絨毛検査といった確定検査を受けて、診断を確定する必要があります。

出生前診断で陽性が分かることによるメリット

NIPTで陽性が分かったとしてでも、妊娠中から治療はできませんが、赤ちゃんの障碍が分かることは、いくつかのメリットがあります。

障碍を持つ赤ちゃんのために準備ができる

あらかじめ染色体数異常について分かれば、出産やその後の育児に向けて、情報収集や準備することも可能です。

状態に合わせた出産法を検討できる

NIPTであらかじめ障碍を把握していれば、赤ちゃんの状態に合わせて、適切な出産方法を選択できます。また、出産後のケアもスムーズに行えます。

出産を希望する場合でも、検査を後悔することも

障碍が分かっても、赤ちゃんの出産を望む人のなかには、NIPTを受けたことを後悔する人もいます。赤ちゃんの持つ障碍に対して、ショックや不安を感じるためです。

そうでなくても妊娠中は、ホルモンバランスが大きく変化することで、心のバランスが保ちにくいものです。出生前診断で陽性となった時の心境は、一人ひとり異なります。

検査を受ける前に、自分やパートナーがどのような性格傾向なのか把握することも大切です。

出生前診断の結果―先輩妊婦さんの対応

NIPTの結果により、自分がどのような決断をするかを考えている人もいるでしょう。2013年に行われたNIPTの集計では、以下のような結果になりました。 

  • NIPTの検査を行った3514人のうち、陰性が3438人、陽性が67人だった。陽性の人で、確定診断のための羊水検査を受けた人は、62人だった。
  • 羊水検査を受けた人のうち、異常なしは6人、異常ありは56人だった。異常ありの人のうち、53人が妊娠中絶を行った。

 上記の結果をみてみると、NIPTをきっかけに赤ちゃんの障碍が分かると、ほとんどの人が妊娠中絶を選んでいることが分かります。

出生前診断を受ける前に考えておきたいこと

出生前診断は、必ずしも受けなくてはいけないものではありません。一方で、子どもの親であれば、おなかの赤ちゃんが健康であるかどうか気になるのは自然なことです。

出生前診断は気軽に受けられますが、ケースごとにどのような対応を取りたいか考えをまとめておくことが大切です。

  • 検査で異常が見つかったら、医師から告知を受けるかどうか
  • おなかの赤ちゃんに染色体異常の可能性があったら妊娠を継続するのかどうか

NIPTを受ける前の心持ちの傾向について

NIPTを受けるうえで、まだ起きていない状況について考えられないという人もいるでしょう。実際に、NIPTに関するアンケートでは、以下のような結果がみられました。 

  • アンケートでは、赤ちゃんに病気や障碍があったときの対処法について質問した。
  • 女性の場合、「出産する」が41%、「相手の気持ちによる」が30%、「分からない」が23%、「中絶する」が2%だった。
  • 男性の場合、「出産してほしい」が17%、「相手の気持ち次第」が45%、「分からない」が21%、「中絶してほしい」が5%だった。

ただ、子どもに障碍があっても出産をしようと考えても、実際には大きなジレンマを抱えて、妊娠中絶を選択する人も多くいます。また、自分が生みたくても、パートナーや家族から中絶を促されることもあるでしょう。

特に、NIPTやその後の確定検査で、赤ちゃんに異常が見つかれば、大きなショックや不安を感じて、冷静に判断できないこともあります。NIPTで陽性になったときは、専門家のサポートを受けるのもおすすめです。

 出生前診断を受けるときはカウンセリングを受けよう

NIPTで異常が見つかったときに、誰かに打ち明けられず、一人で悩みを抱えてしまう人は少なくありません。NIPTをきっかけに赤ちゃんの障碍が分かったとき、専門家によるカウンセリングを受けることができます。

 染色体など遺伝に関する病気が持つあらゆる影響を理解してて適応できるようにサポートするのが、「遺伝カウンセリング」です。通常、NIPTを受けるときは、事前に遺伝カウンセリングを受けることになっています。

 遺伝カウンセリングでは、医師やカウンセラーなど専門家から以下の情報提供を受けられます。

  • NIPTの検査の方法や特徴
  • 検査を受けることによるメリットとデメリット
  • 赤ちゃんに障碍あったときの治療や社会サポートについて

 また、カウンセリングの目的は情報提供ではなく、対話の中で本人が希望する行動を導くことです。カウンセリングを通して、指示や指導されることはありません。行動の主体はあくまで本人になります。

NIPTについて相談できるNPO法人もある

日本の遺伝カウンセリングは、学会からの認定を受けた専門家によって行われます。一方で、国内の遺伝カウンセラーは、現時点では全国に300人弱と少なく、まだまだ不足している状態です。そのため、お住まいの地域に遺伝カウンセリングがないケースもあるかもしれません。

最近では、有志の医師や看護師、または障碍児の家族によって構成されたNPO法人もあります。たとえば、NPO法人の「ゆりかご」では、NIPTの経験者に相談できるサービスを提供しています。

また、おなかの赤ちゃんの障碍が分かったとき、妊娠の継続する人、または妊娠の継続を望まない人の両方に向けた冊子も作成しています。NIPTの検査結果によって、妊娠を継続するかどう揺れ動く人も多いことから、冊子は1つです。

表表紙と裏表紙から開くことで、自分の方向性にあった情報を知ることが可能です。

 NIPTを受ける前や陽性になって悩んでいるときは、遺伝カウンセリングを受けられない場合は、このようなサポートを利用してみるのもよいでしょう。自分の気持ちを明らかにする大きなきっかけになるはずです。

まとめ

NIPTは、おなかの赤ちゃんの染色体数異常をスクリーニングする検査です。妊娠の早い段階で行えることから、陽性が判明したときに妊娠中絶を選ぶ人も多くいます。 

一方で、中絶を選ぶ人が多い背景には、NIPTの目的や障碍児を取り巻く医療や社会について理解がされていないことも要因になっています。

 NIPTを受けるときは、または結果が出て悩んでいるときは、遺伝カウンセリングなどを利用するようにしましょう。専門家や経験者との対話を通じて、自分にとって最善の道を選んでくださいね。

参考文献