新型コロナ変異ウイルスをカンタンに理解したい人へ(2021年5月)

本記事により、信頼性の高い情報を取得できます

『新型コロナウイルスの情報は、何を信用すればいいの?』

『N501YやE484Kの意味がわからない』

本記事は、このような悩みを解決します。

具体的には、

  • 医療従事者や研究者、メディアが当たり前に使っているけど、理解できない言葉
  • 公的研究機関や論文を参考にした、2021年5月時点で信頼性の高い情報
  • 2021年5月時点で、ワクチンの効きづらい変異とは

を解説。

あなたが信頼性の高い情報を得られなければ、根拠や信ぴょう性の低い噂やメディアだけが情報源になります。
いい加減な情報や甘い言葉に踊らされ、あなた自身で判断や選択ができなくなるかもしれません。
他人にコントロールされ、詐欺などに遭う確率も高くなるでしょう。

しかし、本記事を読むと、公的研究機関や論文などの一次情報が理解しやすくなります。
信頼性の高い情報源から、あなたは正しい判断や選択ができるようになるでしょう。

変異ウイルスは、表面が違う

ウイルスに変異が起こると、ウイルス表面にあるスパイクタンパクの構造が変わります。
スパイクタンパクとは我々と新型コロナウイルスの架け橋。
スパイクタンパクがなければ、ウイルスは我々に感染できません。

変異により、スパイクタンパクが変わると、

  • 感染しやすくなる
  • ワクチンが効きにくくなる
  • 重症化しやすくなる

の報告が国立感染症研究所より発表がありました。

変異とは、遺伝情報がかわること

遺伝情報が変わり、ウイルス自身の作るタンパク質までも変わってしまうのを変異といいます。

新型コロナウイルスの遺伝情報はRNAと呼ばれ、

  • アデニン(A)
  • グアニン(G)
  • ウラシル(U)
  • シトシン(C)

がランダムに、約30万個ならぶ物質。
RNAはタンパク質の設計図と例えられ、設計図をもとにタンパク質が作られるのです。
つまり、設計図が変異によって書きかえられた場合、作られるタンパク質も変わります。

たとえば、AAUUGというならび方が「ウイルスの生存能力を高くするタンパク質」の設計図だとしましょう。

※AAUUGは「ウイルスの生存能力の高くするタンパク質」の設計図ではありません。わかりやすく説明するため、仮の設定とします。

ここで変異が起こり、AAUUG→AAUGGとなりました。

もしも、AAUGGが「生存能力が弱くなるタンパク」を示す設計図なら、ウイルスの生存能力が弱くなりましたよね。

N501YやE484Kとは、アミノ酸の変異

変異の仕方について

ニュースで報道されるようなN501YやE484Kは、変異を表した記号。

N501Yとは、スパイクタンパクの501番目のアミノ酸がN(アスパラギン酸)からY(チロシン)へ。
E484Kも484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リシン)を示しています。

RNAが変われば、アミノ酸も変わる

『変異はRNAの遺伝情報が置き換わることだったのでは?』
このようにおもった方はいらっしゃるでしょうか。

結論、RNAの変異はアミノ酸の変異へ直結します。

RNAとはタンパク質の設計図でしたよね。
タンパク質とは、アミノ酸が集まったものです。

RNAの変異によって、作られるアミノ酸が変わるので、違うタンパク質が作られます。

たとえば、タンパク質にかぎらず、材料が変われば、完成品も異なりますよね。

〇〇型とN501Yなどは、何が違うのか

英国型や南アフリカ型、ブラジル型は、複数の変異の組み合わせの総称。

英国型はN501Yを有するもの。

しかし、N501Yがあれば、すべて英国型とはかぎりません。
英国型(B.1.1.7)はN501Y以外に、

  • H69/V70⽋失 
  • Y144⽋失 
  • A570D 
  • P681H

の変異をもつ。

つまり、複数の変異の組み合わせが英国型です。

南アフリカ型(B.1351)もN501Yをもちながら、

  • 242-244⽋失 
  • K417N
  • E484K 

の変異があり、これら変異の組み合わせを南アフリカ型といいます。

VOCとVOIは危険の度合い

新型コロナ変異ウイルスの危険度は、VOC(Variants of Concern)とVOI(Variants of Interest)にわけられています。
その理由は、感染力や重症化へつながる確率に違いがあるからです。

VOCはVOIよりも危険度が高く、 懸念される変異株。
感染性や重症度が増し、ワクチンの効果を弱めるなど、性質が変化した確率の高いウイルスとされています。

VOCには、

  • 英国型 B.1.1.7
  • 南アフリカ型 B.1351
  • ブラジル型 P1

が指定されています。
米国疾病対策センターは、カリフォルニアで発見された、452R.V1(B.1.427+B.1.429)をVOCに位置づけました(2021年3月16日)

さらに、インド型はVOIからVOCに危険度が上がったと報告(2021年5月11日)

VOIは注目すべき変異株。
感染性や重症度ワクチン効果などに影響を与える確率が高いものです。
R1株がVOIとされています。

フィリピン型は、フィリピンではVOCではなく、日本でVOCとされています。

世界と日本の変異ウイルス

世界で流行中の英国型

新型コロナ変異ウイルスの中で世界的にシェアが高いのは、

  • 英国型(130ヵ国)
  • 南アフリカ型(80ヵ国)
  • ブラジル型(45ヵ国)

(2021 3/28時点WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update.28,March 2021,10amより)

新型コロナ変異ウイルスの追跡調査をおこなっている機関GISAIDによれば、

  • カリフォルニアで発見された、452R.V1(B.1.427+B.1.429)
  • 英国で新しく発見された、484K.V3(B.1.525)
  • インド型、452R.V3(B.1.617)

が、上記3種にくわえ、世界で発見された変異です。

日本では?

英国型のシェアが一番高いと報告。
今後、既存のウイルスが英国型へ変わっていく見通しです。

南アフリカ型やブラジル型、インド型も国内で確認されました。
さらに、P3と呼ばれているフィリピン型、発生源がわからないR1株の感染者もでました。

ワクチンの効きにくい型は?

2021年5月、日本で先行接種がおこなわれているのは、ファイザー社/ビオンテック社の共同開発ワクチン。
今後、アストラゼネカ社とモデルナ社のワクチン接種を日本政府が合意し、2021年5月中に承認が下りる予定です。

国立感染症研究所のデータをもとに、世界的に流行している、

  • 英国型
  • 南アフリカ型
  • ブラジル型
  • フィリピン型
  • インド型

に対し、ワクチンの中和能※1がどう変化するか説明しましょう。

※1 中和能:ウイルスの効果を失くす能力。たとえば、中和能が高いと、ウイルスの感染や発症を防ぎやすくなる。

ワクチンの効果が低下する、南アフリカ型とブラジル型

2021年5月の段階で、微小な差はあれど、どのワクチンも同程度の効果を示します。

英国型に対し、3種のワクチンが効果あり、との報告です。
ワクチンに対する中和能が、従来のコロナウイルスと変わらないか微弱の低下。

しかし、南アフリカ型とブラジル型は、3種のワクチンの中和能が中~高程度へ低くなると、発表がありました。

E484KとN501Yをもっていると、ワクチン効果が低下

N501YとE484Kをもっているのは、

  • ブラジル型
  • 南アフリカ型
  • フィリピン型

VOIであるR1株もE484Kを有しています。
しかし、R1株はN501Yをもっておらず、E484Kの単独でのワクチン効果への影響は、まだ可能性の段階としかいえません。

2021年3月、nature medicineへ掲載された研究でも、E484Kがファイザー社/ビオンテック社製ワクチンの効果を下げてしまうと結果がでました。

この研究は、完治した人の血液(抗体がある)とファイザー社/ビオンテック社のワクチンが、

  • 英国型
  • ブラジル型
  • 南アフリカ型

の変異ウイルスを、どれだけ中和できるかを検証しました。
実験でいわれている中和とは、ウイルスの効果をなくす現象。

結果は、英国型が従来の新型コロナウイルスと同程度の抗体量で中和。
しかし、南アフリカ型とブラジル型の中和は、従来の新型コロナウイルスの3.5~4倍量の抗体が必要との報告でした。

いずれも、3つの変異型はN501Yをもちます。
しかし、E484Kをもつのはブラジル型と南アフリカ型。

つまり、E484KとN501Yを両方もつ変異ウイルスが、ワクチンの効果を低くしているのではと考えられています。

ワクチンはインド型にも効きづらい?

系統スパイクタンパク質の主な変異


B.1617
(インド型)
B.1617.1G142D,E154K,L452R,E484Q,D614G,P681R,Q1071H
B.1617.2T19R,G142D,157/158欠失,L452R,T478K,D614G,P681R,D950N
B.1617.3T19R,L452R,E484Q,D614G,P681R,D950N

インド型(B.1617)は、B.1.617.1~B.1.617.3があります。
3つに共通している変異は、

  • L452R
  • D614G
  • P681R

で、さらにB.1.617.1はE484Qまでも。
これらの変異により、予想されるのは

  • ワクチンの効果が1/3に低下
  • 一度回復した人の抗体の効果が1/2に低下

しかし、あくまで実験室の中での評価に過ぎないので、解釈には注意が必要です。

参考文献

最近の遺伝子コラム

niPGT-A(非侵襲的着床前診断)とは~胚にダメージを与えない着...niPGT-A(非侵襲的着床前診断)とは~胚にダメージを与えない着床前検査

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