18トリソミー(エドワーズ症候群)とは

18トリソミーでは、18番染色体が3本存在するトリソミーという染色体異常によって様々な症状が引き起こされます。主な症状としては、出生時低身長や先天性心疾患、小頭症などがあります。重症の染色体異常であり、1年生存率は10%程度と考えられていますが、最近では新生児集中治療や心臓手術などの治療を積極的に行うことにより、徐々に生命予後は改善してきています。

18トリソミー

 18トリソミーとは、エドワーズ症候群とも呼ばれ、1960年にイギリスのジョン・H・エドワーズによって報告された疾患です。通常1対2本の18番染色体が3本存在する18トリソミーによって様々な症状が引き起こされます。

18トリソミーの疫学

 18トリソミーは比較的まれな疾患で、出生児3,500~8,500人に1人の頻度で見られ、男女比は男:女=1:3 程度であることがわかっています。出生する染色体異常の中では、ダウン症候群(21トリソミー)に次いで多く、約10%を占めると言った報告もあります。重症の染色体異常であるため、妊娠中に流産や死産を起こすことが比較的多く見られます。

18トリソミーの原因

 ここでは、染色体異常である18トリソミーの起こる原因について、生物学の基礎的な知識を説明しながら詳しく解説していきます。

染色体とは?

 染色体とは、細胞の中の核に存在している棒状の構造体です。染色体にはヒモ状のDNAが折りたたまれた状態で存在しています。DNAは遺伝情報が含まれており、一つの染色体には複数の遺伝子が存在しています。ヒトの細胞には46本の染色体が存在していますが、父親から受け継いだものと母親から受け継いだものがペアとなって2本ずつが23対存在しています。染色体は概ね大きなものから順番に1番、2番…22番まで番号がつけられています(「常染色体」と呼ばれます)。その他に性別を決定する性染色体(X染色体とY染色体)が1対2本あり、合計23対46本となります。18トリソミーの原因は、18番目の常染色体である18番染色体が2本ではなく、3本となる「トリソミー」と呼ばれる状態になってしまうことです(染色体の番号と合わせて「18トリソミー」と呼ばれます)。

体細胞分裂と減数分裂

 では、なぜ同じ染色体が2本ではなく、3本になってしまうのでしょうか?
 その原因を理解するには、ヒトの細胞分裂の仕組みついて知る必要があります。
ヒトの細胞が分裂して増えていく仕組みには大きく分けて2つの種類があります。一つは体細胞分裂で、もう一つは減数分裂です。
 体細胞分裂は、皮膚などの我々の体の大部分の細胞が分裂して増殖していく仕組みで、細胞が分裂するときに染色体が2倍に増えて2つに分裂するため、染色体の数は細胞分裂の前と後では同じ23対46本になります。
 一方、減数分裂は精子と卵子といった生殖細胞ができる途中で起こる特殊な細胞分裂の仕組みです。減数分裂の途中で、染色体は「減数」分裂の名の通り減っていき、対になっていた2本の染色体のうちどちらか1本が精子や卵子に入ります。そのため、出来上がった精子や卵子は、23対46本から半分の23本の染色体を持つことになります。減数分裂してできた精子と卵子はそれぞれ23本の染色体を持っており、受精することで46本になります。このようにして、子供の受精卵は父親の精子と母親の卵子から染色体を1本ずつ受け継ぐことができるのです。

染色体不分離

 しかし、この減数分裂の途中で、何らかの原因で18番染色体がうまく分裂せず2本とも精子もしくは卵子に入ってしまうことがあります。そうすると、2本の18番染色体を持った異常な精子や卵子が、1本の18番染色体を持つ正常な精子や卵子と受精して、出来上がった受精卵には18番染色体が3本存在してしまいます(これを「染色体不分離」と呼びます)。
 18トリソミーの大部分である80%がこの染色体不分離が原因であると考えられています。染色体不分離と高齢出産が関係あることは知られていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
 18トリソミーは遺伝子(染色体)の異常によって起こる疾患ですが、大部分は染色体分離が原因であるため両親の遺伝子に問題があってそれが子供に遺伝するというわけではなく、「突然変異」によって起こると考えられます。

 約10%は転座型と呼ばれるタイプで、両親のいずれかの18番染色体の一部が他の染色体に結合している(「転座」と呼びます)場合に、18トリソミーの子供が生まれて来る可能性があります。両親は転座している遺伝子を持っていても症状がなく、保因者となります。このタイプは両親から子供へ18トリソミーが遺伝することになります。

 最後のタイプがモザイク型と呼ばれるもので、全体の約10%と考えられています。正常な精子と卵子が受精した後の受精卵が細胞分裂する過程で前述した染色体不分離が生じ、18番染色体が3本になってしまうことで発症します。このタイプも両親から遺伝するわけではなく、「突然変異」によるものです。このタイプの場合は正常の細胞と18トリソミーの細胞が混ざって存在するため、その他のタイプよりも症状が軽くなります。

 18トリソミーの症状

出生前に疑われる所見

 出生前に見られる症状としては、胎動微弱、羊水過多、胎盤矮小、単一臍動脈などがあります。胎児の発育不全、先天性心疾患や手首や足首の形態異常も認めるため、妊娠中の超音波検査で疑われた場合は羊水検査や新型出生前診断などの検査を行い、染色体の異常がないかを調べていくことになります。

特徴的な症状

身体的な特徴:18トリソミーでは顔つきや手足に特徴的な所見を数多く認めます。

  • 小さな体格
  • 小さい顎
  • 後頭部の突出
  • 耳の位置が低い
  • 小さな胸骨
  • 筋緊張の低下
  • 特徴的な手の握り(人差し指が中指や薬指に重なる)
  • 内反足
  • 揺り椅子状足底(突出した踵と弯曲した足底)

先天性心疾患:18トリソミーでは先天性心疾患を合併する頻度が非常に高く、約90%に認められると考えられています。先天性心疾患により、心臓に負担がかかりうっ血性心不全や肺高血圧が早い段階で進行することが生命予後に影響すると考えられています。先天性心疾患の中でも頻度の多いものは以下のとおりです。

  1. 動脈管開存症
  2. 心室中隔欠損症
  3. 心房中隔欠損症
  4. 大動脈狭窄
  5. 両大血管右室起始など

その他の先天的異常:18トリソミーでは心臓以外にも多くの臓器で先天性の異常を認めます。

  • 呼吸器:横隔膜弛緩症、上気道閉塞、無呼吸発作など
  • 消化器:食道閉鎖、鎖肛、胃食道逆流など
  • 泌尿器:馬蹄腎、水腎症、鼠径ヘルニアなど
  • 筋骨格系:多指症、合指症、橈側欠損、関節拘縮、側弯症など
  • 難聴
  • 悪性腫瘍:Wilms腫瘍(腎臓の腫瘍)、肝芽腫

18トリソミーの検査

出生前検査

 クアトロテスト:出生前の血液検査としては、「クアトロテスト」と呼ばれる、母親の血液中のβ−hCG、非抱合型エストリオール、インヒビン、αフェトプロテインという4種類のマーカーを測定する方法があります。

NIPT(エヌアイピーティー 新型出生前診断)

 最近は新型出生前診断(NIPT:non-invasive prenatal genetic testing)と呼ばれる検査も行われるようになってきました。クワトロテストと同様に母親から血液を採取する検査ですが、母親の血液中にある赤ちゃんのDNA断片を解析して、染色体の病気や異変を調べることができる新しいスクリーニング検査です。感度は99.9%、特異度は99.6%とクアトロテストに比べて診断の正確性が非常に高くなっています。ヒロクリニックNIPTでは、このNIPT(新型出生前診断)を行っています。

 ただ、これらの検査はいずれも診断が確定できるわけではなく、あくまでスクリーニングのための検査であり、確定診断には後で説明する羊水検査が必要です。

羊水検査

 血液を用いた検査で18トリソミーが疑われた場合は、診断を確定するために羊水検査が行われます。超音波検査で胎児や羊水の状態を見ながら、細い針を刺して羊水を採取します。羊水中に含まれる胎児の細胞の染色体を詳しく調べます。

18トリソミーの治療

 18トリソミーに特別な治療はなく、半数以上は生後1週間以内に死亡し、生後1年まで生存する割合は10%未満と考えられています。ただ、近年では新生児集中治療や、心臓手術、食道閉鎖手術などを積極的に行うことで、生命予後は徐々に改善してきています。

【参考文献】

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