母親からしか受け継がないDNAの存在、知っていますか?ミトコンドリアDNA

DNAは全部両親から受け継ぐとおもっていませんか? 実は、母親からしか遺伝しないミトコンドリアDNAがあります。 本記事は、ミトコンドリアDNAと核DNAの違いについて解説します。

DNAの知識は、あなたの選択を助けます

DNAの知識はないけど、遺伝子治療や遺伝子検査に興味のある方はいらっしゃいませんか?

このような方にとって、DNAの知識は役に立ちます。
なぜなら、どの検査や治療をすればいいかの判断を、DNAの知識が助けてくれるからです。

本記事では、【ミトコンドリアDNAと核DNAの違い】を説明します。

DNAの知識がないと、自分で判断し、治療や検査を選択できません。
そうなると、必要のない治療や検査を受けさせられ、あなたの大切な時間とお金が奪われてしまう危険性があります。

しかし、DNAの知識があれば、あなたは自分で検査や治療を選択できるようになるでしょう。

その結果、

  • 自分に一番合うダイエット方法
  • 生まれる前の赤ちゃんの将来を、生まれる前から考えるための指標
  • あなたが病気にならないための予防法
  • あなたが病気ならば、最適な治療法

のような、あなたが知りたい情報を得られる可能性があります。

本記事の知識は、あなたが自分で選択し判断できるのを助ける記事の1つとなりえるでしょう。

ミトコンドリアDNAと核DNAの違い

1.存在する場所、形や大きさが違う

ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中、核DNAは核の中

核やミトコンドリアは、細胞の中にあります。

細胞は

  • 髪の毛
  • 臓器
  • 体液・血液
  • 皮膚
  • 精子
  • 卵子

などに含まれ、ヒトの身体を構築するものです。
つまり、DNAは細胞の中にありますが、細胞の中にはミトコンドリアDNAと核DNAの2種類が存在します。

ミトコンドリアと各DNA

ミトコンドリアDNAと核DNAの形と長さ

DNAの形状も異なります。

ミトコンドリアDNAは環状2本鎖で、核DNAは直鎖2本鎖。

環状と直鎖

そして、長さにも違いがあり、

  • ミトコンドリアDNAは約1万6000塩基対
  • 核DNAは30億塩基対

塩基対とは、DNAの長さを示す単位

塩基とはDNAを構成する成分の1つで、

  • アデニン(A)
  • シトシン(C)
  • チミン(T)
  • グアニン(G)

を塩基と呼びます。

DNAは4つの塩基がランダムに並び、繋がっている物質。

さらに、塩基に塩基がくっついて、二重螺旋の形をとります。

塩基が対になって存在するので塩基対といいます。

たとえば、(C)(G)(A)(C)(T)の塩基をもつDNAが存在した場合は、5塩基のDNAです。

それぞれの塩基の対になる塩基は決まっていて、

  • アデニン(A)とチミン(T)
  • グアニン(G)とシトシン(C)

が対となる塩基なので、(G)(C)(T)(G)(A)がくっつき、二重螺旋の形へ。

この二重螺旋DNAが、環状2本鎖や直鎖2本鎖の形をとります。

二重螺旋DNA

細胞の中に、2種類のDNAが存在する理由

もともと、ミトコンドリアの祖先が細胞の中へ入り、共生したからといわれています(細胞内共生説)

有害な酸素から、細胞の利用できるエネルギーに変換するのがミトコンドリアの役割です。

つまり、細胞はミトコンドリアがなければ、酸素からエネルギーを得られにくくなります。

ミトコンドリアの祖先が細胞に住み着いたおかげで、効率のいいエネルギー代謝が可能になりました。

2.遺伝のされ方が違う

DNAは両親から均等に遺伝するもの、これは核DNAの話です。

ミトコンドリアDNAは、母親からしか遺伝しないと考えられています。

理由は、受精※1が起こると精子に含まれるミトコンドリアDNAは削除されてしまうからです。

ヒトで、ミトコンドリアDNAが削除されてしまう理由はわかっていません。

線虫でもヒトと同じく、父親のミトコンドリアDNAが削除されます。

しかし、線虫の場合、ミトコンドリアDNAの削除はオートファジー※2が関与していると考えられています。

※2 オートファジー:細胞内の不要になった物質を分解し、再利用する機能。細胞に備わる機能であり、ヒトでも確認されている。2016年ノーベル生理学賞、大隅良典氏の研究が有名。

※1 受精:精子が卵子の中へ入り、受精は起こります。精子、卵子ともに細胞であり、核DNAとミトコンドリアDNAをもっています。

3.転写と翻訳の場所が違う

ミトコンドリアDNAの転写と翻訳は、ミトコンドリア内で行われます。

しかし、核DNAは転写が核内、翻訳は細胞質内です。

転写・翻訳とは

転写・翻訳とは、DNAからタンパク質を作る過程。
つまり、DNAが転写・翻訳されるので、タンパク質が作られます。

わかりやすく説明するため、DNAは辞書として例えられます。
辞書に記録されているのは、タンパク質の設計図。
その上で説明すると、転写は『辞書から必要なページをコピーしてくること』です。
DNAに記録されているタンパク質は、つねに作られているわけではありません。
必要なときに、必要な分だけ作られるのが基本です。

『必要なページだけをコピー(転写)された設計図から、ヒトの身体がタンパク質を作る』のを翻訳といいます。

4.DNAの利用頻度が違う

DNAの利用頻度は、ミトコンドリアDNAが約93%で、核DNAは約5%といわれています。
DNAの利用頻度とは、DNAにタンパク質の設計図が何%含まれているかです。

たとえば、核DNAの5%とは、辞書にタンパク質の設計図が書かれている割合が5%であるのを示しています。

辞書が1000ページあるなら、うち50ページがタンパク質の設計図です。

タンパク質の設計図以外は、遺伝子間領域(Intergenic region)

DNAは遺伝子領域(gene)と遺伝子間領域(Intergenic region)にわかれています。
遺伝子領域(gene)はタンパク質の設計図となる部分。
遺伝子間領域(Intergenic region)は、設計図が変異などによって書き換えられたり、なくなってしまった部分を含みます。

さらに、遺伝子間領域(Intergenic region)には、遺伝子領域(gene)を調整する役割もあります。

たとえば、転写・翻訳によって、遺伝子領域(gene)がタンパク質を作り、身体へ供給したとしましょう。
供給されたタンパク質で身体が満たされ、もうタンパク質がいらない状態になりました。
このとき、遺伝子領域(gene)にタンパク質を作らせないよう、遺伝子間領域(Intergenic region)が調整をします。

5.コピーの数が違う

核DNAは2つ、ミトコンドリアDNAは100~2000といわれています。
ミトコンドリアDNAのコピーが多い理由は、ミトコンドリアが細胞内で分裂・増殖していくからです。

6.突然変異の起こる確率が違う

突然変異の起こる確率は、5~10倍ミトコンドリアDNAの方が高くなっています。

ヒトとチンパンジーのDNAにどれくらい違いがあるかをみると、

  • 核DNAは1%ほど
  • ミトコンドリアDNAは9%ほど

同一の祖先から、ヒトとチンパンジーへわかれたといわれています。
突然変異の起きる期間が一緒なのに、ミトコンドリアDNAの方がヒトとチンパンジーの違いは大きい。
つまり、核DNAと比較し、ミトコンドリアDNAはおおく突然変異が起きているといえます。

自身の活性酸素によって、ミトコンドリアDNAは突然変異を起こしやすい

ミトコンドリアDNAが突然変異を起こしやすい理由は、活性酸素です。

活性酸素の影響を、ミトコンドリアDNAは核DNAに比べて受けやすいと考えられています。

なぜなら、ミトコンドリアは自ら活性酸素を産生しているからです。

活性酸素は免疫機能や感染防御の役割をもつのに対し、過剰になると老化やガンへ繋がるとされている物質。
ミトコンドリアは酸素からエネルギーをつくっています。
しかし、その過程の副産物として活性酸素を生み出してしまいます。

活性酸素はDNAにダメージを与え、塩基置換を起こし、突然変異へと繋がります。

塩基置換は、突然変異の原因の一端

塩基置換とは、DNAの1~複数箇所の部分が変化してしまう現象。
4つの塩基がランダムに並び、繋がっている物質がDNAでしたよね。

たとえば、(A)(C)(C)(G)(G)(G)と並んでいたとしましょう。
塩基置換が1か所起こるとしたら、(T)(C)(C)(G)(G)(G)となり、1文字目の(A)と(T)が入れかわりました。

塩基置換が起こると、タンパク質の設計図であるDNAが変化し、身体に悪影響が起きる可能性があります。
設計図が変化すると、違うタンパク質が作られたり、タンパク質が作られなかったりするケースがあるからです。

悪影響の一例として、ミトコンドリアDNAの変異は、骨格筋や脳に障害が起きる『ミトコンドリア病』の原因となる可能性もあります。
さらに、糖尿病の発症、ガンの重症度にも深い関係があると考えられています。

突然変異のおかげで進化できた

タンパク質の設計図がメチャクチャになるので、突然変異に悪い印象をもっていませんか?

しかし、悪いことばかりではありません。
なぜなら、良い方向に働けば、進化として種の生存に役立つからです。

たとえば、ヒトとチンパンジーは祖先が同じといわれていましたよね。
環境の変化に対応するために、突然変異がおこり、ヒトとチンパンジーへ分岐していったと考えられています。

7.利用方法が違う

核DNAは

  • 出生前診断
  • 親子鑑定
  • PCR検査
  • 犯罪の科学捜査
  • 遺伝子治療

に利用されます。

ミトコンドリアDNAは、人類の進化に関する研究に利用されています。
核DNAよりも塩基置換がおおく起こり、母親からしか遺伝しない特徴をもつからです。

さらに、老化研究にも利用。
ミトコンドリアDNAの変異により、ミトコンドリアの機能が落ちてしまうと、老化へ繋がると示唆されています。
ミトコンドリアの機能低下は、身体エネルギー低下へ直結し、

  • 身体的な活動量が下がる
  • 内臓の働きが低下
  • 身体が酵素を作りにくくなる

など、老化の特徴が表にあらわれてきます。

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